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R&Dニュース

【新技術トピック】
ビール工場排水由来のバイオガスを活用した燃料電池発電の実証事業を開始

2020.09.03

ビール工場排水由来のバイオガスを活用した燃料電池発電の実証事業を開始

 アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社(以下、AQI社)は、CO2排出量削減の新たなモデルとして、ビール工場排水由来のバイオメタンガス(以下、バイオガス)を利用した燃料電池による発電の実証事業を、アサヒビール茨城工場にて開始します。設備の導入は2020年8月に完了し、運転開始は10月を予定しています。

 今回の実証事業は、環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」で実施しています。この設備が稼働すると、発電出力200kWとして年間発電量約160万kWh(一般世帯約350戸分)の電力を供給することが可能となり、これにより年間1,000トン程度のCO2排出量削減が見込まれます。


CO2排出量削減のための新技術を工場に導入、実用化に向けた最終試験を開始

 アサヒグループでは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」のなかで、気候変動への対応として温室効果ガス排出量削減の中長期目標「アサヒカーボンゼロ」を設定し、2050年に温室効果ガス排出量をゼロとすることを目指しています。「アサヒカーボンゼロ」の達成を目指した取り組みの一貫として、AQI社は燃料電池発電をはじめ、自立型水素エネルギー供給システムや、CO2分離回収試験装置を導入し、実証試験を行ってきました。

 AQI社では2016年頃から、エネルギー変換効率の高い燃料電池による発電設備導入に取り組んできました。燃料電池のカーボンニュートラルな動力源として、ビール工場の排水処理化工程で発生するバイオガスを用いるため、2018年6月までにガスを高純度に精製するプロセスを開発しました。精製したバイオガスを用いて小規模の燃料電池で発電する試験を実施、2019年5月には1万時間の連続発電に成功しています。

 今回の実証事業で導入した燃料電池は、三菱日立パワーシステムズ社製の固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、以下SOFC)で、SOFCのなかでも特に発電効率が高く、CO2発生量の少ない発電装置として知られています。この設備とカーボンニュートラルなバイオガスを組み合わせることで、大幅なCO2排出量の低減が期待できます。

 2020年10月から実用化に向けた最終試験を開始し、2022年3月の事業完了までに、工場排水から得られるバイオガスを動力源とした燃料電池発電技術の確立を目指します。

ビール工場排水由来のバイオガスを利用したSOFCによる発電工程
ビール工場排水由来のバイオガスを利用したSOFCによる発電工程

技術の社会実装をめざした具体策を検討

 アサヒグループでは、工場排水を活用した燃料電池発電技術の社会実装を進めることで、広くCO2排出量の削減に寄与できると考えています。そのため、今回の実証事業で得られたバイオガス精製や設備導入に必要な技術に関して、特許を取得することなく、可能な限り情報を公開していき、特に食品業界など技術を活用可能な業界へ幅広く普及させていきます。

具体的に、まずはアカデミックな場所での情報公開を検討しており、本年は国内外2件の学会で発表予定です。
・2020年度 電気化学会九州支部シンポジウム「循環型社会に貢献する電気化学」(10/16)
・14th European SOFC and SOE Forum (10/20@スイス)

ご興味のある方は、ぜひ学会にご参加ください。