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アサヒクオリティーアンドイノベーションズ(株) 事業化戦略部 小谷 哲司 アサヒクオリティーアンドイノベーションズ(株) 事業化戦略部 小谷 哲司

プロフィール

アイデアと実力を駆使し 酵母の可能性を切り拓く

1996年、酵母の全ゲノム配列解析プロジェクトが完了したとのニュースが発表されました。当時、大学で酵母について研究していた私は、「これからはこの知見をいかに利用するか、研究者のアイデアと実力が問われる時代になるだろう」と確信し、「企業で酵母を活かした製品を作る仕事に就きたい」と、1999年にアサヒグループに入社しました。

小谷 哲司

ビールづくりに欠かせない酵母は、炭酸やアルコールを生み出すだけでなく、その小さな体に驚くようなチカラを秘めています。アサヒグループでは“新たな酵母を見つけ出し、世界が驚くような発見”を目指し、ビール酵母をはじめとした様々な酵母の研究に力を入れています。


培ったノウハウと経験を活かし 新たな分野を果敢に切り開く

小谷 哲司

長年にわたり日本のビール業界を牽引してきたアサヒグループの酵母研究の歴史は、およそ100年前から始まります。早くから酵母の栄養成分に着目したアサヒグループでは、1930年にはビール製造副産物を活用した「エビオス」(現在の「胃腸・栄養補給薬『エビオス錠』」)を発売。その後も醸造用酵母の研究を深めながらも、エキス製造、栄養・機能性、農業資材、バイオエタノール研究と、幅広い分野で研究を進めています。

そんなアサヒグループの研究環境の中、私も様々な角度から酵母研究に取り組みました。中でも力を入れ製品化につながったのが、「グルタチオン酵母エキス」の研究です。 酵母の体の中にはタンパク質やアミノ酸、ビタミンといった様々な成分が含まれており、それらは肉や魚のような“うまみ”を生み出す特徴があります。アサヒグループでもビール製造副産物の酵母を原料とした酵母エキス(調味料)を1960年代から製造・販売していましたが、食の安全への関心の高まりとともに天然系調味料である酵母エキスへの注目度は年々高まっており、需要拡大への対応が求められていました。
グルタチオンは、食品に“コク”を与えることで塩味や甘味を引き立たせる特徴があり、少ない調味料でも満足度の高い食品に仕上がり、本物の肉に近い味付けも可能になるため、カロリーカットやコスト削減にもつながります。さらに、活性酸素を除去する働きもあるため、抗酸化も期待できます。おいしさと健康機能を合わせ持った高付加価値な酵母エキスを開発するために、アサヒグループでは長年「グルタチオン高配合酵母エキス」の開発に取り組んできましたが、その道のりは険しいものでした。私は、先輩たちが育て上げた酵母を、実際の製造工程で量産するために、様々な実験及び検証を重ねました。実験室レベルでうまくいったとしても、工場レベルで再現できるわけではありません。多くの仲間とともに苦難を乗り越え、ついに販売が決定したときの喜びは何物にも代えがたいものでした。

人と人とのコミュニケーションから新たなアイデアが生まれ、長い歴史の中で紡がれてきた想いを次代へと受け継ぐ

小谷 哲司

アサヒグループでは“世界の人々の健康で豊かな社会の実現”を目指し、酒類、飲料、食品、飼料、肥料、環境といった幅広い分野で事業展開をしています。2013年には“魅力ある酵母を見つけ出し、アサヒグループの新たな事業・中長期的な成長事業を支える技術の確立を目指す”という方針が打ち出され、これまでにない新たな酵母を活用した製品のアイデアを創出することになりました。

アイデアといっても、荒唐無稽な思いつきを発表するわけではありません。グループで意見を検討し、ある程度の実験を経た上で、「これなら製品化が望める」「市場にニーズがある」「利益を創出できる」といった予測が立つアイデアを、研究所からの提案として発表します。研究グループをまとめる立場にあった私は、まずは仲間と密にコミュニケーションを取ることを第一に求めました。休憩中の会話、依頼や質問、相談の際、その日の業務の報告時など、どんなタイミングでもかまわないので、相手の意見に耳を傾け、自分のアイデアを人に伝えるということを意識的に行うようにしました。すると、会話の中の言葉が引き金になって、様々な新しいアイデアが連鎖して出るようになっていったのです。さらには視点も多角的になり、多様な気づきが生まれるようにもなりました。チームとして動き出したと感じた瞬間です。現在は、そうして生まれたアイデアが、製品化に向けて動き出しています。チームだからこその強さを改めて感じていますね。

もう一つ、新しい製品のアイデアを見つける際に私が力を入れたのは、“過去の研究にスポットライトを当てる”ということ。研究所には、先輩たちが挑みながら、製品化まで辿りつかなかった多くのアイデアが保管されています。当時の技術では実現できなかったアイデア、当時の市場ニーズには合致しなかったアイデアなど、様々です。それに付随した実験や検証の結果も豊富に残されており、今だからこそ活かせるアイデアも眠っています。また、壁にぶつかった時に乗り越えるヒントが見つかることもあります。アサヒグループの研究開発の歴史とノウハウが蓄積されていますので、これを活かさない手はありません。

アサヒグループの長い研究開発の歴史と、そこに息づく先輩研究者たちの足跡と遺産、意志。これを現在の私たちが継承し、花を咲かせる。そして、また次の世代に受け継いでいく。それがアサヒグループの研究を背負う私たちが果たすべきことだと感じています。

「酵母のイメージを一新したい」 それがアサヒグループの使命であり、責任でもある

小谷 哲司

私たちアサヒグループにとって、酵母はかけがえのない財産です。酵母のすばらしさや魅力を引き出し、それを世の中に提供することは、私たちの使命だと考えています。
私が目指しているのは、ヨーグルトや醤油、味噌のような“おいしさと健康”を兼ね備えた食品を酵母で作り出すこと。スーパーで日常的に手に取れる食品の横に、当たり前のように酵母食品が並んでいること。



そのためには、「この食品を摂れば、こんな効果が得られる」といったビビッドな特徴を持った製品を作り、広く認知されなければなりません。それが実現できるのは、私たちアサヒグループにほかならないと考えています。

私たちは、日本でも有数のビールの生産量を誇っています。だからこそ、豊富なノウハウと経験が受け継がれてきたのです。このアサヒグループの強みは、一方で責任でもあります。日本のビール業界を牽引する企業だからこそ、ビール酵母をはじめとした酵母製品で、イノベーションを起こさねばならない。私自身、そのプライドと責任を胸に、これからも邁進していきたいと考えています。

(2016年12月26日公開。取材当時 アサヒグループホールディングス(株)コアテクノロジー研究所 酵母技術部長

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