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研究レポート

Report

ディアナチュラ、一錠にギュッと込められた技術
-独自の製造技術で飲み込みやすい錠剤の形を実現-

ディアナチュラ、一錠にギュッと込められた技術<br>-独自の製造技術で飲み込みやすい錠剤の形を実現-
 健康な体を維持するために必要な成分を補ってくれるサプリメントは、継続して摂取することが大切です。そのためにはサプリメントが飲みやすい形をしていることや、必要な成分を少ない錠数で摂取できる、といった健康維持の機能以外の品質も高めることが非常に重要です。
 アサヒグループの主要サプリメントブランドである「ディアナチュラ」シリーズでは独自の製造技術を駆使して、飲み込みやすさや溶けやすさ、それ以外にも見た目(外観)の品質など様々なこだわりを実現しています。一錠にギュッと込められた、サプリメント開発の技術をご紹介します。

錠剤タイプのサプリメント

錠剤タイプのサプリメント

 サプリメントの形状は、錠剤・カプセル・粉末・液体など色々ありますが、最も馴染みがあるのは錠剤タイプではないでしょうか。
錠剤をつくる際、実は有効成分が含まれた粉末を単純に混ぜて固めるだけでは、錠剤の形にはなりません。錠剤に加工するためには、つなぎの役割を担う結合剤や、摂取した後にさっと溶けるようにするための崩壊剤、原料が製造機器に付着するのを防ぐ滑沢剤など、配合成分以外にも様々な副原料が必要となります。かといって、副原料をたくさんいれると、今度は錠剤が大きくなったり、一度に飲む錠数を多くする必要がでてきてしまいます。

 アサヒグループでは、お客様に継続してお飲みいただけるよう、錠剤を飲み込みやすくするための様々な技術開発に取り組んでいます。

錠剤スリム化のための技術開発

 錠剤タイプのサプリメントは、以下のような工程で製造します。まず原料を計り、必要に応じて造粒(=粉末原料を加工し顆粒状にすること)し、混合・打錠(=混合した原料を圧縮・成形すること)して形をつくり、その後適宜コーティングをします(図1)。

錠剤タイプのサプリメント製造工程
図1 錠剤タイプのサプリメント製造工程

 

 アサヒグループ食品(株)では、特に「造粒」工程の技術開発に注力し、錠剤の飲み込みやすさ改善に取り組んでいます。造粒の方法はいくつか種類がありますが、通常よく利用されるのは、装置内に投入した粉末原料に温風をあてながら原料を混合し、装置上部から結合剤を含む溶液を噴霧することで、粉末より大きな「顆粒」をつくる方法です(図2)。
この工程を経ることで、原料はより扱いやすく、打錠がしやすくなると共に、服用した時にきちんと崩れやすくなるというメリットがあります。しかし、造粒する原料の選抜や、温風の温度・風量の条件、噴霧する溶液の種類や濃度、また噴霧条件がほんの少し変わるだけで打錠のしやすさに大きく影響を与えるため、どのように造粒するかは、いわば職人技ともいえます。

 例えば「ディアナチュラ」シリーズの主力商品である「29アミノ マルチビタミン&ミネラル」は、29種類もの成分を含有していますが、開発者は造粒技術を駆使することで、使用する副原料を大幅に削減、これにより錠剤のスリム化を実現しました。

造粒工程の概要
図2 造粒工程の概要

スリム化に伴う新たな課題

 しかし、副原料を減らし錠剤をスリムにすることが、思わぬトラブルを生む場合もあります。 「29アミノ マルチビタミン&ミネラル」では、保存期間が長期にわたると、錠剤に茶色い斑点(褐変)が発生するリスクが高くなることが明らかになりました。錠剤スリム化の改良で、つなぎとなる副原料を減らしたことにより、有効成分同士の接触が大幅に増えてしまったことが原因と考えられました。褐変したものを摂取しても健康上の問題はありませんが、見た目の品質が損なわれてしまいます。飲み込みやすさと外観品質の良さを両立させるために、副原料を減らしたままで褐変を抑える手法を開発する必要がありました。

 課題解決のため、まずは何の成分が反応しているのかを検証しました。含まれている成分のうち、特にビタミンC(VC)とアミノ酸が共存する際に褐変が起こりやすいことを踏まえ仮説をたて、その2つの成分を抜いた錠剤サンプルを試作し、保存試験を実施しました。いずれか1つの成分を抜いた時には褐変が発生しなかったことから、仮説通りVCとアミノ酸が共存することで反応し、褐変が発生していることが明らかになりました(図3)。

錠剤褐変の原因となるVCとアミノ酸の反応
図3 錠剤褐変の原因となるVCとアミノ酸の反応

飲み込みやすさと外観品質を両立

 次に課題となったのは、スリムな形状を保ったまま、どのようにVCとアミノ酸の反応を防ぐか、という点でした。VCの粉末に代わる原料の使用なども検討しましたが、どの代替原料でもアミノ酸と反応し褐変が発生したため、製造に適したものを見出すことができませんでした。
そこで開発者は、すでに製品中に配合している原料のうち、アミノ酸と反応しにくく、VC粉末より細かく硬い性質をもった原料でVC粉末の表面を覆うことを考えました。これにより、アミノ酸とVCが直接接触しなくなり、褐変を防げるのでは?と仮説をたてたのです。VC粉末を覆えるような、細かく硬い物性をもっている原料を探した結果、カルシウム源である「貝カルシウム(貝殻を粉砕したもの)」が適切であることを見出しました。

 最後は、貝カルシウムでVC粉末を覆う、製造工程を開発しました。VC粉末と貝カルシウムの粒径や配合比率、さらに造粒する際の温風の温度や風量の条件、噴霧する溶液の種類や濃度といった溶液噴霧条件を様々に検討し、貝カルシウムでVC粉末を覆うことに成功しました(図4)。造粒した顆粒を用いて錠剤を製造した結果、長期の保管でも褐変がほとんど発生しないことも確認しています。

貝カルシウムによるVC粉末の被膜のイメージ図
図4 貝カルシウムによるVC粉末の被膜

 このように製剤に関する技術、特に造粒技術を駆使することで、たくさんの成分を含有しながらも、飲み込みやすさと外観品質を両立させた「29アミノ マルチビタミン&ミネラル」をつくりあげました。

まとめ

「ディアナチュラ」シリーズは、お客様に多くの成分を手軽に摂っていただきたいという想いから、「29アミノ マルチビタミン&ミネラル」をはじめ、複数の成分を一錠で摂取できるラインアップも多く展開しています。たくさんの有効成分を一錠に詰め込みながら、飲み込みやすさや外観、崩壊のしやすさといった製品の品質までこだわり、実現するためには、原料の選定から配合の組み合わせ、造粒や打錠まで、多岐に渡る高度な技術が必要となります。

アサヒグループでは、今回開発した造粒技術をはじめ、これまで蓄積した様々な製造技術をもとに、よりお客様に継続してご利用いただけるサプリメントを追求して参ります。