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研究レポート

Report21

グルコサミンと筋骨草エキスによる損傷軟骨の修復効果

グルコサミンと筋骨草エキスによる損傷軟骨の修復効果
我が国の高齢者比率が年々高まっている現在、加齢に伴う症状のひとつに、変形性膝関節症があります。この症状は、膝関節のクッションとなる軟骨のすり減りや筋力の低下が要因となって、膝の関節に炎症が起きたり、関節が変形したりして痛みが生じるものです。
変形性膝関節症の推定患者数は50歳以上で2,400万人とも言われ、関節の疾患は要支援、要介護の主要な原因ともなっており、より積極的な対策が望まれています。
この変形性膝関節症に効果のある成分として、グルコサミンと筋骨草エキスによる損傷軟骨の修復促進効果を、鳥取大学との共同研究により検証しました。その成果をご紹介いたします。

【研究の背景と目的】

グルコサミンは、関節軟骨を形成する軟骨基質成分の1つで、これまで損傷軟骨の修復促進に対する有効性が多く報告され、変形性膝関節症に対する有用性が示されてきました。

研究の背景と目的

筋骨草は、中国では漢方薬として、日本では民間薬として古くから使われてきたシソ科の多年草です。「イシャタオシ」「イシャイラズ」などの別名で呼ばれ、切り傷、腫れ物、高血圧、発熱、腹痛などに煎じて服用されてきました。
近年、骨の形成促進や抗炎症効果などに関する報告がされていますが、関節軟骨の損傷や軟骨下骨に対する効果は報告されていませんでした。

筋骨草

今回、変形性膝関節症に効果のある成分の研究として、グルコサミンと筋骨草エキスの損傷軟骨の修復促進効果について単独及び併用それぞれの検証を行いました。

【研究の概要】

対象:ウサギ12匹(各群3匹×4)
被験物:グルコサミン、筋骨草エキス(それぞれ水に混ぜて投与)
試験群:4群(a:コントロール群(被験物なし)、b:グルコサミン群、c:筋骨草エキス群、d:併用群(グルコサミンと筋骨草エキス両方を投与))
試験方法:関節軟骨に損傷孔を形成し、その後3週間被験物を投与して関節損傷部の修復効果を比較しました。期間終了後、損傷部の組織を採取して染色を行いました。組織染色画像から、損傷部の軟骨・軟骨下骨の修復効果比較及び平均破骨細胞数の測定を行って、被験物の効果を検証しました。

研究の概要

結果の概要

その1 損傷軟骨、損傷軟骨下骨の修復効果比較(図1:組織染色図)

  • 損傷孔を形成した直後は軟骨・軟骨下骨ともに孔が開いている状態になっていますが、密な組織修復が進んだ後、徐々に損傷していない部分と同様の状態に戻っていきます。
  • b:グルコサミン群、c:筋骨草エキス群、d:併用群とも軟骨の修復がみられました。特にb:グルコサミン群では、損傷部への軟骨修復(実線○)がコントロール群よりも有意※に進んでおり、軟骨形成促進効果が確認できました。
     (※有意とは、統計学的にその現象の差が「偶然に起こったものではない」ことを示しています。)
  • d:併用群では、軟骨だけではなく、さらに軟骨の下を支える軟骨下骨(点線○)まで有意に修復が進んでいることが確認されました。これは、グルコサミンによる軟骨修復作用と、筋骨草エキスによる軟骨下骨修復作用が相補的に働くことによって、軟骨下骨というしっかりとした土台に支えられた軟骨として、損傷部の修復が進んだといえます。
組織染色図
(図1:組織染色図)

その2 軟骨下骨形成に関するメカニズムの検証(図2:平均破骨細胞数)

  • 破骨細胞は骨形成時に骨を溶かして骨量のバランスを整えることが知られていますが、これが過剰になると骨密度が減って骨がもろくなり、骨粗しょう症の原因ともなります。
  • 組織染色画像を確認すると、c:筋骨草エキス群とd:併用群では破骨細胞数が有意に減少していました。
  • 軟骨下骨の破骨細胞が抑制されたことにより、軟骨がさらに骨に置き換わる「軟骨内骨化」が進み、骨形成バランスが骨の形成側に傾いていると推察されます。
平均破骨細胞数
(図2:平均破骨細胞数)
検査結果
【研究結果まとめ】

今回の結果により、これまでの報告と同じようにグルコサミンが損傷軟骨の修復に良好に作用すること、また筋骨草エキスも同じように損傷軟骨を修復することが示されました。さらに筋骨草エキスは破骨細胞を抑制して軟骨下骨の骨化を促進することが示されました。その結果グルコサミンと筋骨草エキスは相補的に損傷部の修復を促し、軟骨のみならず土台の軟骨下骨も修復することで、よりしっかりと支持された軟骨の形成が促進されることが示唆されました。これは骨粗しょう症など骨の脆弱化に起因する変形性膝関節症に対しても有用である可能性が考えられます。
なおこれまでのグルコサミンや筋骨草エキスについての研究で得られた結果は、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社の商品開発等に活用されています。

 

本研究成果は、平成24年1月21日に開催された第8回グルコサミン研究会学術集会にて発表しました。
アサヒグループは今後も食と健康に関する研究を続け、お客様の心豊かな健康生活を支援するためのさまざまな活動に取り組んでいきます。