1. トップページ
  2. 研究開発
  3. 研究レポート
  4. 世界初!生きた微生物の摂取によりヒトの骨密度が増加-おなかに作用する「枯草菌C-3102株」が骨にも効果-

研究レポート

Report45

世界初!生きた微生物の摂取によりヒトの骨密度が増加
-おなかに作用する「枯草菌C-3102株」が骨にも効果-

世界初!生きた微生物の摂取によりヒトの骨密度が増加<br>-おなかに作用する「枯草菌C-3102株」が骨にも効果-
 私たちが健康上の問題がなく生活できる期間(健康寿命)をより長くするためには、病気の予防だけでなく、骨を健康に保つことも非常に重要です。骨折は大きく生死には影響しないものの、寝たきりなどに繋がるケースが多いためです。骨の健康状態を表す指標のひとつに、「骨密度」があります。この骨密度が低下すると骨折のリスクが増大し、骨粗鬆症となる可能性もあります。
 今回、生きた微生物を摂取することで、ヒトの骨密度が増加するという知見を、アサヒグループが世界ではじめて明らかにしました。微生物の摂取=腸への効果というイメージが強いですが、腸内フローラのバランス改善などを介して骨密度を増加させている可能性も示唆されており、私たちの想像を越えた意外な関係性があるのかもしれません。

骨の代謝のしくみ

 骨は、体の細胞と同じように常に新陳代謝を繰り返しています。古くなった骨を破骨細胞が壊し(骨吸収)、骨吸収された部分に骨芽細胞が新しく骨をつくることで(骨形成)、成人では35年の時間をかけて緩やかに全身の骨が入れ替わるといわれています(図1)。この代謝のバランスが骨吸収側に偏ってしまうと、骨密度が低下し、自覚なく骨粗鬆症となってしまう場合があります。この骨粗鬆症の患者は、現在国内に1,300万人程度いると推定されており、症状の治療や予防は社会的に重要な課題となっています。

 一部の女性ホルモンにはこの骨吸収を緩やかにし、骨密度を維持する機能がありますが、閉経後は女性ホルモンが大幅に減少するため、骨密度が低下してしまうことが知られています。閉経や加齢などによる骨密度の低下を抑えるためには、一般的にカルシウムの吸収や骨の形成を促進するビタミンを摂取することが推奨されています。

骨代謝のバランスが保たれているイメージイラスト
図1 骨吸収と骨形成のバランス

 アサヒグループの「枯草菌C-3102株」は生きて腸まで届き、腸内環境改善や胃腸症状緩和の機能を有する微生物です。腸に関連した機能改善はヒトだけでなく、様々な家畜においても発揮されます。

 これまでに「枯草菌C-3102株」を雌鶏に与えると、整腸効果だけでなく生まれる卵の殻が分厚くなる、という知見が得られていました(図2)。卵の殻の主成分はカルシウムであることから、ヒトの骨代謝にも良い効果があるのでは?と仮説を立てて検証した結果、ヒトが「枯草菌C-3102株」を継続摂取することによって、骨密度が増加することが明らかになりました。生きた微生物を摂取することで、ヒトの骨密度が増加した、という知見が得られたのは、今回の研究が世界初。その詳細をご紹介します。

「枯草菌C-3102株」の摂取により、雌鶏が産む卵の殻が分厚くなるイメージイラスト
図2 鶏卵の殻を分厚くする機能のある「枯草菌C-3102株」

大腿骨の骨密度が増加!

 今回の研究では、「枯草菌C-3102株」がヒトの骨密度に与える効果を調べることが目的でした。前述の通り、特に閉経後の女性は骨密度の低下が著しいことから、骨粗鬆症ではない健康な閉経後女性に協力してもらい、「枯草菌C-3102株」の骨密度に与える効果を検証することにしました。


<試験方法>

閉経から2年以上経過した、5069歳の健康な女性76名を2群に分け、「枯草菌C-3102株」を含むタブレット、もしくは含まないタブレット(プラセボ)を、24週間摂取してもらいました。

<結果>

タブレット摂取前後の大腿骨(足の付け根部分)の骨密度を比較した結果、「枯草菌C-3102株」摂取群では、プラセボ摂取群と比較して骨密度が有意に増加しました(図3)。

大腿骨骨密度の変化を示したグラフ
図3 大腿骨骨密度変化率の比較

なぜ微生物が骨に効く・・?

「枯草菌C-3102株」の摂取により、おなかも骨も元気になっているイメージイラスト

 「枯草菌C-3102株」は腸内フローラの占有率(腸内フローラを構成する各菌の割合)も変化させることが分かっています。閉経後女性を対象とした今回の試験でも、11種類の菌属の占有率が変化しています。
ではおなかに効く微生物を摂取すると、なぜ骨密度まで変化するのでしょうか。

 今回の試験では、骨密度の他に骨代謝マーカーも測定しました。この骨代謝マーカーは骨形成マーカーと骨吸収マーカーがあり、骨代謝の状態を確認することができます。骨代謝マーカーの変化率を比較すると、タブレット摂取から12週目で2種類の骨吸収マーカーの量に減少がみられました(図5)。このことから、「枯草菌C-3102株」の摂取により、骨吸収が抑制され骨密度が増加したと推察されます。

骨吸収マーカーの変化率を示すグラフ
図5 骨吸収マーカー変化率の比較

 しかし、なぜ骨吸収が抑制されたのか、という点に関してはまだ明らかになっていません。「枯草菌C-3102株」の摂取によって腸内フローラが変化したり、腸の免疫系に作用し破骨細胞の活性を抑制したのでは、と考えられていますが、メカニズムの詳細な解明には更なる検証が必要となります。

まとめ

 近年の研究成果から、乳酸菌をはじめとする微生物を摂取し腸内フローラを整えることが、様々な健康状態の改善に繋がることが分かってきています。今回ご紹介した「枯草菌C-3102株」のように、微生物がもつ新たな機能が今後さらに明らかになっていくと考えられます。

 アサヒグループでは、微生物ライブラリーやヒトの腸内などから求める機能をもった有用菌を選抜し、研究を進めています。今後もさらに微生物に関する研究開発を深耕するとともに、その知見を活かして、お客さまの健康維持に貢献して参ります。

研究レポート一覧