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挑戦する研究者たち挑戦する研究者たち

縁の下の力持ちとして食の安全を守り、お客様に「真の安心」を届けたい。

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アサヒグループホールディングス株式会社
グループ食の安全研究所
須賀 啓子

中学の理科の実験で、化学変化を目の当たりにして、そこから化学に興味を持ち、大学では環境問題にも知識を広げたいと考え「化学工学」を専攻しました。恩師の「カラダは食べたもので、できている」との言葉がとても印象的だったこともあり、就職は食品業界を目指し、その中で環境にも力を入れていたアサヒビール株式会社を選びました。それから私の「食の安全・安心」へのチャレンジがはじまりました。

最先端の研究環境とチームワークの良さに恵まれて

食の安全を脅かす物質は、残留農薬やヒ素、水銀といった重金属だけではなく、カビが産生する天然毒素(以下カビ毒)など、多種多様です。カビが産生する「カビ毒」は、一般には馴染みがないかもしれませんが、水に溶けやすく安定なため注意が必要な物質です。
「グループ食の安全研究所」では、アサヒグループがつくる製品の「安全・安心」を保証するために、様々な分析法の開発を行っており、その中で私は残留農薬やカビ毒の分析法の開発を担当してきました。

須賀 啓子

新たに分析法を開発するためには、最先端の機器と、その分析法に関する知識、実務経験の中で積み上げてきた技術、それらすべてが必要です。知識や技術は各自が日々の仕事の中で培ったものが多いので、チーム全員の技術力を向上させるためには「共有」が大切です。実践的でとても役立っているのは、その時々の研究で得られた結果について、すぐにディスカッションし、互いにアドバイスし合う習慣です。これが、チーム全員の技術力向上に結びついていると実感しています。
 
またアサヒグループには、部門や会社間の壁も越えて、互いにサポートし合う風土があります。私が、様々な分析法をいち早く開発できたのも、この風土の賜物ともいえます。仕事が上手くいって、チームメンバーだけでなく協力してくれたみんなと喜びを分かち合える瞬間が、何よりも嬉しいですね。
 
研究においては、「計画(Plan)実行(Do)、確認(Check)、修正行動(Action)」のサイクルが基本です。各段階でチームのメンバーから適切なアドバイスをいただけるのですが、ただ鵜呑みにするのではなく、自身の成長のために「自分で考え抜くこと」が大切です。
最近はメンバーにアドバイスする機会が多くなり、教える立場になって思うことは、「失敗しても得るものは必ずある。失敗は次につながるチャンス。『自分の力で成し遂げた』という経験が大切。それを積み重ねることで研究者としての自信につながる」ということです。若いメンバーには、そのことを伝えていきたいと思っています。

須賀 啓子

限られた時間で成果を生むための「習慣」

新しいテーマに取り組む時は、チームで大まかな方向性とスケジュールの確認を行いますが、日々の時間管理は、個々の研究員の裁量に委ねられています。
分析で重要なことは「迅速かつ正確」に結果を出すことですが、そのような分析法を開発するには情報収集が重要です。情報収集によって、研究の動向を把握し、最適な分析手法を選ぶことができ、最終的に開発時間が短縮化されます。私は時間の許す限り、国内外の論文等を調べるようにしています。
限られた時間で成果を生むための「習慣」は、研究に必要な「じっくり考える時間」を作りだすだけでなく、ワークライフバランスの調和にも結びつくと考えています。

「真の安心」をお届けするために、私たちの挑戦はこれからも続きます

須賀 啓子

昨今、世界中で食の安全への関心が高まっています。日本の食の安全に関する基準は厳しいのですが、それ以上に厳しいのはEUです。アサヒグループでは、このEU基準にも対応できる分析技術をすでに保有しています。それは、グローバルに事業を展開するアサヒグループにとって、EUを含めた各国の基準に対応したリスクに備えることが、重要な「社会的責務」だと考えているからです。そのため、私たちは開発した最新の分析技術を学会や学術論文などで積極的に外部公表をしています。また、これらの活動で得られた社外ネットワークを通じて、公的機関を含むトップレベルの研究者と情報交換や技術交流も行っています。
食品は安全であることが絶対条件です。食の安全を支える縁の下の力持ちとして、お客様に「真の安心」をお届けするために、これからも新しい分析法の開発に挑戦していきます。
(2017年6月13日取材)