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挑戦する研究者たち挑戦する研究者たち

それぞれの得意分野を活かし、チームの力で「アサヒブランド」を守る!

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アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社
食の安全研究所 安全評価部
グローバル技術支援プロジェクトメンバ-

伝統的な海外ビール企業を買収するなど、アサヒグループのグローバル展開が拡大する中、海外を含むアサヒグループ全体の安全・安心を守る“品質の最後の砦”としての役割を担っているのが「食の安全研究所」だ。篠原、ヨハネス、壽谷の3人は、海外のグループ会社に向けた「グローバル技術支援」を担当。海外のビール事業を中心に、微生物事故を防ぐための技術支援や新規技術の開発を行っている。全世界の「アサヒブランド」を守るという大きな課題に、共に悩みながら解決してきた3人に、チームでプロジェクトに臨むことについて話を聞いた。
  • プロジェクト全体統轄担当

    篠原 雄治

    2014年入社

    学生時代は微生物の生合成研究などに取り組む。
    アサヒビール(株)に入社後は、食の安全研究所内にてでさまざまな分野の分析技術開発に従事。

  • 欧州・東南アジアのビール事業/飲料事業担当

    ヨハネス クルニアワン

    2016年入社

    学生時代は分子微生物の研究などに取り組む。
    アサヒ飲料(株)入社後は、同社の技術研究所にて微生物分析を担当した後、現職に。

  • 中国・欧州のビール事業/食品事業(国内)担当

    壽谷 尭俊

    2015年入社

    学生時代は海洋微生物の代謝改変、系統解析の研究に取り組む。当時のカルピス(株)入社後は、発酵応用研究所(その後アサヒグループHD(株)コアテクノロジー研究所)にてペプチドの研究を担当した後、現職に。

――グローバル技術支援とはどのようなプロジェクトなのでしょうか。

AQI篠原研究員

篠原 最終的なゴールは、アサヒグループが販売している全商品での「微生物事故ゼロ」です。具体的には、品質のトラブルに繋がる微生物を検出する技術や、微生物種の同定法をグループ全体に広めています。
例えばビールは比較的微生物が生育しにくい飲み物なのですが、一部の乳酸菌をはじめとするビール混濁性微生物はビール中でも生存することができます。このビール混濁性微生物が増えてしまうと、ビールが混濁したり、変な臭いを発して味わいが損なわれます。我々のプロジェクトでは、そういった微生物事故をブランド全体で未然に防ぐため、特に欧州やアジアのグループ会社に対して技術支援を行っています。

壽谷 日本でビール混濁性微生物とされている微生物は20種類程度ですが、日本とは製法も成分も違う海外のビールでは、それ以外の微生物が出てくることもあります。直接現地に行き技術指導することもありますし、工程中に検出された微生物を送ってもらって種を同定するテクニカルなフォローもしています。また、新しい技術の開発にも注力しています。

AQIヨハネス研究員

ヨハネス 私は欧州のビール事業支援をメインで担当しているので、欧州の工場に行って技術交流をすることがありますが、技術者たちの実験スキルのレベルはそれほど日本と変わらないと思います。しかし、私たちが得意とするような遺伝子レベルの分析技術や、微生物を高感度に検出する技術については持っていないケースが多い印象です。こちらで開発した技術を海外で展開し、現地の技術力を強化できると考えています。

篠原 微生物事故をはじめとした品質に関わるトラブルは、商品だけでなくアサヒグループ全体の信用も損ね、企業ブランドの価値を下げることになるので、我々のプロジェクトはアサヒブランドを守るための取り組みであると自負しています。また、単なる技術指導や技術交流にとどまらず、世界中に拡がるグループ会社間でのシナジー創出を促し、最高の品質を守る技術を確立することを目指しています。

座談会の様子

――3人はどのように協力し合って進めているのでしょうか。

篠原 私が全体の統轄をして、北京と一部の欧州ビール企業は壽谷さん、欧州ビール企業と東南アジアはヨハネスさんが担当し、協力し合いながらもそれぞれが主体的に進めています。ただ、同じ部屋で一緒に過ごしているのでお互いに何をしているかも把握していますし、情報共有は積極的にするようにしています。

AQI壽谷研究員

壽谷 普段から3人でよく話をしています。先日はヨハネスさんがやっていた微生物試験のデータを北京の案件の参考にしたくて、相談に乗ってもらいました。そういうことが日常的に行われています。

ヨハネス こんなに大きなプロジェクトを一人で達成することはできませんから、小さい部屋で相談しやすい環境なのも良かったと思います。個人では気づかないこと、見えないことも、2人の視点から色々な意見をもらえます。

篠原 国内では、アサヒビールやアサヒグループホールディングスの関係部門とも連携していて、微生物試験以外にも様々な技術支援を展開しています。

実験室で会話する研究員たち

――海外のグループ企業へ技術展開をしてみて、現地の反応はいかがですか?

篠原 とても快く迎え入れてくれます。フレンドリーな方が多く、毎回訪問してよかったな、と感じています。ただ一部の工場では、最初は「今まで大きな問題は起こっていないし、これまでのやり方を変える必要はないのでは?」という反応もありました。しかし、アサヒのノウハウや、技術を紹介することにより、今まで把握できていなかったことや、できていなかったことが明らかになり、今では現地の担当者に分析技術向上の必要性を十分感じてもらえるようになりました。
食の安全性に対する日本の技術力の高さは世界でも知られていて、その中でも「アサヒスーパードライ」をはじめとするアサヒの商品は、国内トップレベルの品質を誇っています。一方でグループ企業各社も大切にしている手法がありますので、やり方を押し付けるのは絶対に良くないと考えています。こういう技術があるので試してみませんか、と投げかけること、同時に我々が知らないことがあれば教えてもらう、という双方向の関係を構築していっています。

実験作業をする壽谷研究員

壽谷 それから、私たちと海外の方たちの考える“常識”が異なることもよくあり、噛み砕いて丁寧に説明する必要があります。普段当たり前だと思っていることを、改めて分かりやすく説明することで自分たちの中でも整理できました。ビールの品質を担保するために何をすべきかを簡潔に説明するのは大変でしたが、結局一番勉強になったのは自分だったかもしれません。

ヨハネス 伝え方は私も気をつけています。私は欧州や東南アジアの人たちとメールでやりとりすることが多く、私たちの目標やゴールを明確にしておかないと相手に理解してもらえません。なので、可能な限りシンプルに、ハッキリ伝えることが大事だと考えています。

壽谷 海外と同じやり方を日本でやると、少々問題かもしれませんけれどね(笑)。でも、海外に対しては、多少忖度のある日本的なやり方では本当の意図が伝わりませんので、ヨハネスさんが言うように「これをやってほしい。なぜならこういう理由があるから」ということを明確にしてお願いするようにしています。

――かなり歴史の古い海外ビール企業もあるようですが、そういう会社の方と意見が合わないことはなかったのですか。

篠原 海外の皆さんもビールづくりに対して強いフィロソフィーがあるので、必ずしもこちらが求める安全・安心のための取組みに馴染まないケースもあり、その狭間でどのように進めるか悩むこともありました。100年を超える歴史を持つ欧州の企業は、地下の洞窟のようなところで大きな木の樽を使ってビールを製造しているところがあり、日本の工場の安全基準から見ると微生物リスクが高いと言わざるを得ません。しかし、その製法でしか生み出せない味があり、長きにわたりその味がお客さまから支持されています。彼らが大事にしてきた伝統を活かしながら安全かつ高品質につくる方法を一緒に考えていく必要があると感じています。

ピルスナーウルケルを製造するピルゼン工場
訪れた工場のひとつ、ピルスナーウルケルを製造するピルゼン工場

――皆さんそれぞれの仕事のモチベーションになっているものは何ですか?

壽谷 私は、この部署に来てから自分たちの技術力がアサヒという企業ブランドを守っていることを実感しました。北京や欧州のグループ企業でもアサヒスーパードライがつくられていることを目の当たりにして、自分たちの技術でしっかり守らなければ、アサヒの商品ブランド、ひいては世界中の企業イメージも傷つけてしまうんだ、と痛感しています。これをきっかけに、安全とブランドに対する責任を感じるようになりました。そもそも微生物が好きなので、飽きることはないですね。

実験をするヨハネス研究員

ヨハネス 私も微生物が好きなので、研究自体が面白いです。そして、自分の中でどのように事業に「貢献」できるか、を考えながら仕事をしています。最近では私たちの開発した技術や技術交流を通して現地の技術力が向上していることを実感することも多く、彼らの成長を見られることがすごく嬉しいです。それが私のドライビングフォースになっています。

実験をする篠原研究員

篠原 安全を担保するための技術は日々進化していて、これまで分析できなかったリスク要素を検出できる技術が次々と開発されています。そのような最新の技術をもっと知りたい、という知的好奇心もモチベーションのひとつです。また、いつも実験室に閉じこもるのではなく、製造現場との交流が活発なのもこの部署の良いところだと思います。
ただ、原料や製造のグローバル化、お客さまの安全意識の変化など、食をとりまく環境が日々変化する中で、「食の安全」を保証するのはとても難しいことです。何も起こらないことが当たり前なのですから、成果が見えにくいことも事実です。今、目の前にあることを着実に、そして迅速にやることが重要と感じています。

――研究者は一人で研究に没頭するイメージがありますが、チーム体制でやることの強みはなんでしょうか。

篠原 2017年に壽谷さんが異動してくるまでの約1年間は私とヨハネスさんの2人体制だったんです。そこに壽谷さんと実験を補佐してくれる方が加わって4人体制になったのがすごく大きかった。人数としてはわずか2人でも、2倍以上のシナジー効果が生まれました。2人体制の頃は、あまりマネジメントもできませんでしたが、4人になったことで役割分担が明確になり、それ以来うまく回るようになってきたなと実感しています。チームも、私自身も成長できました。

AQI食の安全研究所の研究員

ヨハネス そうですね。篠原さんと2人のときは本当に大変でした。実験室も狭かったので、一つのベンチで2人で作業していましたよね。だから、4人になって部屋が大きくなったことはすごく嬉しかったです。それに、篠原さんのマネジメントスキルもかなり成長したと思いますよ(笑)。篠原さんはもともと私のブラザー(※)なのでたくさんお世話になっていますが、最近はさらに強いリーダーシップで業務を進めてくれます。
(※アサヒグループのOJT制度のひとつ)

壽谷 私は後から異動してきたので、2人はどんな人たちだろうかと少し心配でした。でも、実際に会ってみるとすごく接しやすい方で安心したのを覚えています。私たち3人は微生物に精通しているという繋がりはあるものの、ほかに興味のある分野や経験、得意分野が全然違います。その中でお互いに認め合いしっかり話し合う環境ができているので、それぞれの資質を活かせていると思っています。

篠原 確かに得意分野はそれぞれ違いますね。ヨハネスさんは英語が堪能で、現地の人へのやりとりがすごく早くて的確。壽谷さんはデータ処理が上手で、スライドづくりもきれいで見やすいうえにプレゼンもうまい。それぞれの得意分野を活かして補完し合うことができ、よいチームに体制になっています。個人的には、自分の成長のために、皆さんの得意分野を見習っていきたいと思っています。

ディスカッションする研究員たち

――このメンバーでこれから先、チャレンジしたいことはありますか。

ヨハネス 私は今まで飲料とビールの微生物検査の分野をやってきましたが、個人的なビジョンとしては微生物のスペシャリストを目指していますので、現在の領域にとどまらない、幅広い微生物分野の研究に携わっていきたいと思っています。そして、これからもこのチームで、“グローカル”な支援を継続しながら、アサヒグループの新しい価値の創出にチャレンジしていきたいです。

壽谷 これまで海外の新しい場所で、自分たちの技術を受け入れてもらう方法を確立してきました。その経験を活かして、食の安全だけに留まらずに、将来的に必要になる技術のタネを見出し、3人のチーム力で世界初の技術として展開したいと思います。

篠原 私も、食の安全を追求しつつ、その分野にとどまらない領域への展開を考えています。私たちの強みは微生物だけでない幅広い知識を持っていることと自負しているので、それらを十分に発揮し、新規技術の開発、新規機能性素材の探索、新たな菌の有用性検証など、学生時代にわくわくしながら研究したような領域にも挑戦していきたいです。そして、特定の商品や国の枠を超えて、アサヒグループの企業価値向上に繋がる取組みをしていきたいと考えています。

(2019年9月取材)

AQI食の安全研究所の研究員3名
座談会の間、笑顔の絶えない3人。仲の良さもチーム結束の強さにつながっている