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アサヒグループの「源泉」となり、世の中にたしかな「パイプライン」をつないでいく!

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アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社
事業化戦略部

アサヒグループは、これまで酵母や乳酸菌などの機能性素材や、発酵・醸造技術、分析技術など、さまざまな研究開発に取り組んできた。長年にわたって培ってきた研究開発のノウハウを活かし、将来の成長エンジンとなる新たな価値創造の「源泉」となる拠点として、2019年4月にアサヒクオリティーアンドイノベーションズ(株)(以下、AQI)が設立された。AQI設立と同時につくられた事業化戦略部は、AQIで生まれた研究成果や技術をグループ内・外に広く展開するための部署。この部署に配属された大塚、木村、藤田は、新しい事業を構築するという重責を負いつつ、アサヒグループの源泉を社会につなげていくため奔走している。
  • 事業化戦略部 大塚康伸

    海外事業化戦略推進担当

    大塚 康伸

    当時のカルピス(株)に入社。「カルピス」など飲料の商品開発を担当した後、海外事業会社の商品開発支援を行う部署に所属。現地マーケティングや、国内の研究所との橋渡しなどを担当し、2019年4月から現職。

  • 事業化戦略部 木村睦子

    海外事業化戦略推進担当

    木村 睦子

    当時のニッカウヰスキー(株)に入社。ウイスキーやワインの営業企画、輸入業務を中心にキャリアを積む。その後研究所へ異動し、市場調査や未来予測・トレンド調査などを担当。2019年4月から現職。

  • 事業化戦略部 藤田淳史

    グループ外事業化戦略推進担当

    藤田 淳史

    アサヒビール(株)に入社。グループ各社へ出向し、菓子類の商品開発や、コーヒー飲料、炭酸飲料の商品開発などを担当。2018年に一度退職し、転職先の外資系企業にて新規事業立ち上げを経験した後、2019年10月に復職して現職。

―事業化戦略部とは、どのような部署なのでしょうか。

AQI事業化戦略部インタビュー写真(大塚)

大塚 AQIは、アサヒグループとして企業価値向上への取り組みをさらに推進するために、研究開発と新規事業創出に取り組む会社なので、研究者が生み出したシーズ※が主役です。そして、AQIで生まれた数々のシーズを、アサヒグループ内はもちろん、もっと広く世の中で活かす戦略をたてるためにできたのが、事業化戦略部です。そのままではメリットが分かりにくいシーズを、グループ内外のお客さまが最も価値を感じられる形で情報提供し、さらに具体的に事業にするまでの道筋を考えることが私たちに求められている役割です。シーズを元に、新たな成長エンジンとなりうる事業を打ち立てるという意味では、AQI設立の意義を体現するような部署だと言えると思います。
(※本文中では研究成果や技術の意味)

藤田 AQIには「独自価値創造の源泉となる」というビジョンがあるので、その源泉となるシーズの価値を分かりやすく提示し、それを最大限活用できる企業につなぐ、ということです。我々の部では、“AQIで生まれたシーズという源泉はあっても、その効能を必要としている人に届かなければ入ってもらうことはできないので、源泉を温泉地までパイプラインで引いて効果効能(シーズの価値)を伝え、たくさんの人に入ってもらえるように整備するのが私たちの仕事だ”と例えていますね。

大塚 私たちが成果を外につなぐ役割を専任することで、研究者が研究に集中できる環境を整えるという意味もあります。

―具体的にはどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。それぞれの担当領域があれば教えてください。

AQI事業化戦略部インタビュー写真(木村)

木村 私と大塚さんは海外向けにシーズを展開する「海外事業化戦略推進チーム」で、藤田さんがグループ外の企業に向けて展開する「グループ外事業化戦略推進チーム」です。大塚さんは一部グループ外への事業化にも関わっています。

大塚 今までアサヒグループの研究成果は圧倒的に国内向けのアウトプットが多かったのですが、グローバルのトレンドなどを掴んだ上で、海外のグループ会社も有効活用できるシーズを展開しようとしているのが、海外事業化戦略推進チームです。これまでにコミュニケーションをとってきた海外の事業会社の中には、当社の機能性素材に興味を示している会社もあります。

木村 海外のグループ企業に向けて提案するためには、国内のことも含め、広く世界の情勢を知っている必要があります。ですので常にアンテナを張って、調査会社が出しているレポートや、海外のさまざまなニュースサイト、メールマガジンなどから幅広く情報を集めています。海外に関する調査情報は日本語だけだと内容が限定されるため、大部分は英語の記事から得ています。

大塚 近年では、WHOがアルコールや砂糖の摂取量の減少を提唱していることもあり、減糖やノンアルコールが世界的な流れとなっています。

木村 そういったことをグローバルな視野で見てまとめるだけでなく、社内の研究員向けにも、次の研究ネタや方向性を考える時のヒントにしてもらうことを意識して、情報を発信することもしています。

―藤田さんの担当領域はいかがでしょうか。

AQI事業化戦略部インタビュー写真(藤田)

藤田 グループ外事業化戦略推進チームは、アサヒグループ外の企業に当社の技術や素材を販売するための戦略を考えています。これまでは研究員たちが先進的でオリジナリティのある研究開発に取り組んでいても、グループ内で活用できなかったシーズはそのまま使われることなく終わってしまうケースもありました。
しかし、グループ外にも広く目を向ければ、アサヒ内では活かしきれなかったシーズも有効活用できるかもしれないので、何とかして本当に活用できる相手につなげたい。そのために、今は社内にどのような技術があり、どういう強みがあるのかをリサーチして、整理しています。

大塚 発酵制御の技術、製造技術、分析技術とか、社内の技術を広く検討していますよね。

藤田 はい。それぞれの技術のレベルが高いので、まずはその内容を理解するのが大変です。研究所の報告会に行って話を聞いたり、自分からもやりたいことを聞いてもらったりしながら、どういう技術が世の中に必要とされているのかを調査し、考えています。私は外部に一度出た経験があるからこそ、今改めてアサヒの技術力の高さを感じています。この技術力を最大限に活用できれば世の中に貢献できる事業を生み出せる、と私自身が感じています。

木村 グループ外の事業化で対象としているのは、アサヒグループの他の事業会社が対象とする業界以外なので、藤田さんも大塚さんも最初にものすごく調べていますよ。

大塚 社内の技術と、売り込もうとしている業界のこと、両サイドを知らなければいけませんから。しかも自社と競合しない異業種が対象になるので、全く知らない業界についてイチから勉強です。

―社内外と関わる人が多いお仕事かと思いますが、コミュニケーションではどのようなことに気を付けていますか。

藤田 私はAQI以外にも、飲料や食品の開発担当の人のところに行くことも多いですね。私は以前、飲料や、食品の開発部門にもいたので、当時の知り合いにも話を聞かせてもらっています。そうやって話を聞く間に、さらに詳しい方を紹介してもらったりして、人脈をつくっている最中です。

AQI事業化戦略部インタビュー写真(木村)

木村 それは私たちも一緒ですね。私もアサヒビール社にいたので、研究所以外にも顔なじみはたくさんいます。それから、休憩時間にリフレッシュエリアなどで研究員と雑談も含め情報交換をすることも多いですね。そういう雑談を通して、誰がどんなことをしようとしているか、どんな情報を持っているか、逆にほしがっているかなどを知ることができ、それがきっかけで良い資料をもらえたり、人を紹介してもらえたり、お互いにとても貴重な場となっています。そうやって、研究者との間に双方向のインタラクションを持つことを大切にしています。

大塚 自分もふらっと実験室に話を聞きに行くことが多いです。行っても雑談していることがほとんどですけれど、とにかくこちらから行くことが大事だと思っています。
一方で、社外の人に向けた営業はすごく難しいです。ただ、自分自身が研究や開発のキャリアの中で、外部企業から提案を受ける経験もしているので、今私たちが相対するお客さまの気持ちが分かる部分もあります。もしも自分が研究者で、導入する立場だったらどうかなと考えながらコミュニケーションを取るようにしています。

AQI事業化戦略部インタビュー写真(打ち合わせ風景)
海外の気になる商品や、研究員から提案のあった素材を実際に口にして検討することも

―皆さんはこの部署が立ち上がって初めて一緒に仕事をするようになったそうですが、お互いの印象はいかがですか。

藤田 私はお二人からすごく刺激を受けています。木村さんの情報収集力や仕事の進め方はすごく参考になりますし、大塚さんも参考になりそうな記事や本などをお薦めしてくれます。私は戦略やビジネスモデルの構築で悩んでいるので、そういうときにすっとヒントを差し出してくれるんですよ。

大塚 一緒に悩もうという意味で、決して上から目線ではないですからね(笑)。

木村 藤田さんはこの部署に来てまだ数か月なのに、白紙の状態から一生懸命調べている様子が見えて、こちらもとても刺激になります。
それから大塚さんはソフトドリンク事情に強く、私はアルコール事情に強いというお互いの強みを活かし合うことができています。二人とも海外の仕事をしていたので、レポートなどでよく見かける、市場を表現する独特な英語の言い回しを、その背景も含めて理解したり、共通言語で話せる感覚があります。

大塚 同じような感覚で話がスムーズに共有できるのは、私も感じています。また、木村さんはこれまでのキャリアで培ったノウハウを活かして有効な情報をキュレーションしてくれるので、大変心強いですね。

木村 大塚さんの場合、そういう市場理解のための意思疎通もできる上に、研究者としての理系的な強みもありますよね。研究者の人からは「大塚さんは研究者とはまた異なる開発経験もあるので、頼りになる」とよく言われていますよ。

藤田 いいチームですよね。

AQI事業化戦略部インタビュー写真(打ち合わせ風景)

―これから先は、部署としてどのようなことを目指していきたいですか。

大塚 パイプラインをたくさんつくりたいです。今、外販の可能性を探っているものの一つに、アサヒグループのさまざまな課題解決を通してノウハウを培ってきた、AQI社プロセス開発研究所のCAE(Computer Aided Engineering)というコンピュータシミュレーション技術があります。ある展示会でこの技術を紹介したところ、いくつかの企業が興味を示してくれています。まだ手探りではありますが、そうやって研究者の方と一緒に一つ一つ実績を積み上げていきたいと思っています。

AQI初の技術を展示会で説明している風景
展示会のブースでCAE技術をお客さまに紹介

木村 私たちのチームは、研究が進行中のシーズを扱うことも多いので、社内の研究部門をいい形でアシストしつつ、海外も見据えた上で、私たちなりの戦略をつくっていきたいと思います。

大塚 確かに、戦略の部分はこれからの課題ですね。

藤田 戦略には「こうすれば絶対にうまくいく」という正解がないから、本当に難しいです。でも、絶対的な正解がないならば、自分の好きに考えていいんじゃないかと思っています。もちろん、好きに考えるにしても筋の通ったロジックが必要なので、今はそのための土台を築いているところです。そこから戦略に落とし込むのは容易ではないですが、いろんな人に話を聞いたり、情報を集めたりといったことが、この先活きてくるはずです。

―この部署でやりがいや楽しさを感じるのはどんなときですか。

大塚 研究者の方々が生み出した素晴らしいシーズを、世の中に繋げていくという仕事はやりがいがあります。事業化への道筋が見えてきたり、研究を何かに活用してもらえるかも、と思ってもらい、一緒に働く研究者の方のモチベーションアップに貢献できるような仕事ができるとうれしく感じます。

木村 私はこれまでの経験で培ったトレンド調査やマーケティング視点、生活者視点といったものを活かして、研究のさまざまな段階でサポートをできることですね。その技術をどう活かすか、このような技術があるといいのではないか、と出口を強く意識しながら積極的に提案するようにしています。提供した情報についても、研究者の方から反応をいただいたり、それを題材にディスカッションの場につながったりしているのを見ると、やりがいを感じます。

AQI事業化戦略部インタビュー写真(藤田)

藤田 新しいことにどんどんチャレンジしていけ!という風土がAQIにはあります。誰もやったことがないことにトライさせてもらえるのは、難しいけれどやりがいがあります。私はコーヒーが好きすぎて一度アサヒを辞めて外資系コーヒーショップチェーンに転職し、新店舗の立ち上げに携わったのですが、そこでのミッションを終えて、もう一度新しいことにチャレンジしたいとアサヒに戻ってきました。だから、今チャレンジしていること、そのものがやりがいですね。

―最後に、これから皆さんがチャレンジしてみたいこと、目指すものを教えてください。

藤田 この部署が取り組んでいる、シーズを新しい事業にしてグループ内外へ提供していく試みは、アサヒの新しいビジネスモデルになると思うので、そういう意味でもAQIをリードできる部署でありたいと思っています。個人としては、メーカーとしてのアサヒの技術力の高さやここで経験したことを活かして、大好きなコーヒー業界の発展に寄与できたらうれしいです。

木村 今、世界の若者は、食などを通して自分がどのような思想を持ち、どんな所に属しているか、といったアイデンティティを主張しています。私たちが扱うお酒や飲料、食はそのような人々の主張の一端を担い、文化となりうるものなので、世界の流れをきちんとキャッチアップして、新しい生活文化をつくる商品や技術を外に出していきたいと思っています。
また、私は学生時代にアメリカにホームステイするなど何度も海外に行く中で、日本メーカーの商品に出会うととてもうれしかった記憶があります。AQIの技術や、それらを活用した商品を海外に広めていけるようにがんばりたいです。

大塚 私はもともと社会的に価値を生み出すビジネスに興味があり、カルピスに入社したのも創業者である三島海雲の考え方に共感したからです。グローバルなトレンドを見てもエシカル(倫理的)な価値を重視する傾向は高まりつつありますから、AQIの技術を具体的な形にして、世の中に役立つ価値を生み出していきたいと考えています。そして、「AQIはいつも面白い技術を出してくるね」と、グループの中からも外からも言われるようになっていくことが目標です。

(2019年11月取材)

AQI事業化戦略部インタビュー写真(集合写真)
それぞれがプロ意識をもって独立しながらも、同じ方向を目指している魅力的なチームだ