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味を追求するアサヒグループのフリーズドライ食品が現代の「食」課題へ貢献

フリーズドライ食品と聞いて、何をイメージしますか? 非常食や宇宙食などを思い浮かべた方は、コンビニやスーパーでフリーズドライ食品を見かけても、どこか遠い存在と捉えているのではありませんか。しかし、そのような印象は、もしかするとフリーズドライ食品に対する記憶が古いせいかもしれません。
今では揚げ物の衣まで、まるで作りたてのように味わえるようになったアマノフーズ(*注)のフリーズドライ食品。おいしいだけでなく、驚くほど多様なラインナップが増えており、また、こうしたフリーズドライ食品が、食に関する社会課題の解決方法の1つとして注目を集め始めています。最新のフリーズドライ食品の魅力と、社会課題解決にむけた可能性を紹介します。
*注:「アマノフーズ」は、旧天野実業(株)から引き継いだアサヒグループ食品(株)のフリーズドライ食品のブランドです。
※記事は食育や災害食の専門家として多数メディアで活躍されている今泉マユ子氏による助言のもと編集しています。
企画・編集/文化工房(株)

アドバイザープロフィール
今泉 マユ子(いまいずみ まゆこ)
防災、食育、栄養相談、食に関するセミナーなどを事業とする株式会社オフィスRMの代表取締役。管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に勤務。2014年に管理栄養士の会社を起業した2児の母。調理師、食育指導士、防災士、日本災害食学会災害食専門員など幅広い資格を持つ。著書に「親子で学ぶ防災教室~災害食がわかる本(理論社)」、「もしもごはん(清流出版)」など。NHK「あさイチ」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、TBS「王様のブランチ」ほかテレビ出演も多数。
味も種類も!進化し続けるフリーズドライ食品
東京駅のすぐ近く、アマノフーズのアンテナショップ「アマノ フリーズドライステーション」では、「これが本当にフリーズドライ食品?」と驚く来客者がめずらしくありません。おみそ汁はもちろん、カレー、パスタ、リゾット、さらに枝豆やナス、大根おろしといった素材までそろっています。販売が終わってしまいましたが、トンカツやチキンカツといった揚げ物などフリーズドライ食品のイメージを覆すものまで。お湯でなく、水でもおいしく戻せる商品も登場しています。


海外旅行者からの注目も高く、軽くておいしいお土産として購入される方も増えています。2019年7月に成田空港に「アマノ フリーズドライステーション成田空港店」を期間限定オープンし、日本の味を持ちかえりたい、おみそ汁やパスタ、どんぶりをいつでも食べたいなど、旅行者のさまざまなニーズに応えました。
海外に留学していたある女性は、自分の食生活を心配した友人から、アマノフーズのフリーズドライのおみそ汁が送られてきたといいます。彼女は、その味に出会った時の驚きを、アサヒグループ食品のお客様相談室へ届けてくれました。
「つくってみるとあまりの懐かしさとおいしさにボロボロと泣きながら夢中で食べていました。茄子が作りたてのようにふわふわで、日本にいた時に母がよく作ってくれていたものに本当に似ていて。家族でこのおみそ汁を飲んだなあと懐かしくて嬉しくて、今でもあの喜びを思い出すことができます」

食卓の一品としてもまったく遜色がない、本当につくりたてのように感じられる商品が増えてきたフリーズドライ食品。忙しい時や簡素になりがちな1人での食事の時に、手軽に品数を増やすことができる現代人の食の選択肢として認識され、消費量も増加しています。
フリーズドライ食品のつくり方とは?
フリーズドライ食品は、そもそも、どうやってつくるのでしょうか。フリーズドライの仕組みをひも解いてみましょう。
フリーズドライの技術は、医学の分野での活用を目的として生まれ、食品の長期保存にも利用されています。食品中に水分があると、微生物による腐敗や風味劣化を起こします。古くから保存食品の代表である乾燥食品は、天日干しや熱風などで水分を取り除くことによって腐敗を防いでいます。しかし、乾燥途中段階では表面と内部の乾燥具合に差が生じて、水分や成分が移動し、物理的な変形もおこります。結果、もとの風味や食感とはまた違った、乾燥食品独特の味わいに仕上ります。
一方、フリーズドライでは、まず-30℃以下の温度で食品の深部まで凍結します。食品が凍結したら、真空に近い状態まで減圧して水分をとばし乾燥させます。この時、氷は水蒸気となって食品から抜け出てゆくので、水分があった場所にはスポンジ状の微小な空洞が残ります。お湯を注ぐと、このスポンジ状の空洞に水分が入り込み、もとの状態を復元、見た目も味もよみがえらせることができるのです。

風味や食感を保ち、お湯ですばやく戻せるフリーズドライ食品をつくるには、凍結工程の管理がとても重要です。塩分、糖分、油分が多いと食品は凍りにくくなるため、しっかり凍結させるためには適切な凍結温度を見極めないといけません。さらに、凍結させるスピードも適切に設定する必要があります。フリードライ食品の開発では、どの温度まで、どのくらいの速さで凍結するのか、緻密な検討が必要なのです。
技術を磨き、味を追求し続けるアサヒグループの企業文化
アサヒグループにおけるフリーズドライ食品の歴史は、1960年代の旧天野実業にさかのぼります。1971年に世界初のカップラーメンが日本で作られた時、旧天野実業はカップラーメンの具材となるフリーズドライ食品を開発・提供していました。フリーズドライのおみそ汁の開発は、旧天野実業の社長夫人の「1人分のおみそ汁をつくったり、暑い夏にだしをとるのは大変だから、フリーズドライでつくってくれないかしら?」という何気ないひと言をきっかけに始まりました。当時の担当者は「おみそ汁が夢に出てくるほど試飲し、みその塩分で口内炎ができました」と振り返ります。1982年、ついに最初のフリーズドライのおみそ汁が誕生。妥協せず挑戦する姿勢が実った瞬間でした。
新しいフリーズドライ食品の開発では、成分分析や計算に基づいた処理工程の設計も重要ですが、数々の挑戦で経験を積み上げてきたスタッフたちの感覚も大切です。例えば、事前に具材を合わせてつくる場合、その具材を入れる順序やタイミングは、色や食感を確かめながら調整し、凍結乾燥の工程においても、水分の蒸発量をみながら微調整が行われます。「目指す味や食感を再現する方法は必ず見つかるはず」と信じる開発者たちが納得するまで作り込むからこそ、多様でおいしいフリーズドライ食品を生み出すことができるのです。



「フリーズドライにしやすい食品だから商品化しよう」と発想するのではなく、「人々が求める素材や食品だからフリーズドライにしよう」と挑む。「今までにないものを」と立ち上がった天野実業の開拓精神は、現在もしっかりと引き継がれています。
こうした挑戦の連続により、アサヒグループはフリーズドライ食品の独自の技術を有し、特許も取得しています。また、1度に8万8千食つくることができる世界最大級の真空凍結乾燥機を持ち、おいしい商品を大量に・効率的につくることができます。素材やそれらの素材の組み合わせによって最適な乾燥条件が異なる中、真空凍結乾燥機の管理・制御を、これまで蓄積してきた技術で行い、さらに、技術のみに頼るのではなく人の感性も大切にして味を追求できる企業風土は、アサヒグループの強みだと言えるでしょう。

社会の課題解決にも期待されるフリーズドライ食品
目覚ましい進化を続けるフリーズドライ食品は、近年、社会の課題解決の手段の1つとしても期待されているのをご存知でしょうか。
近年の社会課題として、「食品ロス」問題があります。食品ロスとは、まだ食べることができるのに捨てられてしまう食品のことです。日本では年間に約2,800万トン生じる食品廃棄物のうち、食品ロスが約640万トンあるとされています。その内45%に当たる291万トンが家庭から生じる食品ロスです。世界では栄養不足に苦しむ人たちがたくさんいる現代において、とりわけ大量の食料を輸入している日本で、食品ロス削減は、真摯に取り組むべき大きな課題です。2019年10月には「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され、今後ますます重視される社会課題の1つとなっていくでしょう。

家庭での食品ロスは、なぜこれほど多いのでしょうか。家庭からロスが出る主な理由は、 保管しておいた食品の消費期限切れや賞味期限切れなどで手つかずのまま捨ててしまう「直接廃棄」、野菜の皮を厚くむき過ぎるなど、食べられる部分まで捨ててしまう「過剰除去」、そして「食べ残し」の3つに分けられます。単身者や高齢者世帯では、仕事や体調に波があり日々の食事量も変動します。さらには2人以上の家庭でも、生活スタイルの多様化からバラバラに1人で食事(いわゆる「個食」)する家庭が増えています。1人の食事では、どうしても作りすぎによる「直接廃棄」や「食べ残し」が多くなりがちです。この課題解決に、長期間常温で保存でき一品分の食事を提供できるフリーズドライ食品を活用する考えが広がっています。

フリーズドライ食品は、お湯を注いで混ぜるだけ、という手軽さも大きなポイントです。単身者や高齢者の生活では日々のなにげない家事すら負担に感じられることがあります。自炊を心がけていても「あと一品を加える時間がない」ということは少なくありません。また、家族に1人だけ減塩メニューを用意しなければならないといった場合にも、アマノフーズのフリーズドライ商品には「減塩みそ汁(塩分25%カット)」もあり、有効活用できるのです。
さらに、災害時の保存食としても、フリーズドライ食品の特性が役立ちます。災害時の限られた調理環境でも少量のお湯があればつくることができるフリーズドライ食品は、大切な食糧になります。災害が起こった時だけでなく、ケガや病気・新型感染症になった時など、外出できない時にも役立ちます。被災して大きなストレスを受けた時、おいしいものがあれば気持ちがホッと和らぎます。フリーズドライ食品は栄養価の変化が少ないため、ビタミンや食物繊維など非常時に不足しがちな栄養の補給にもなります。
近年は、災害用の備蓄用品を押入れの奥にためこむのではなく、日々の生活で消費と補充を繰り返す「ローリングストック」という防災の考え方が注目を集めています。例えば、月に1度は保存食を活用して食事するといった試みです。保存食を実際に使ってみることで、商品と家族事情などの相性に気づけることもあります。アサヒグループの窓口に寄せられたお客さまからのお声に次のようなものがありました。「高齢の母がとても気にいってたんです。(他の)インスタント(おみそ汁)に入っている乾燥ワカメは、お年寄りには噛めないんです。それが入っていない(アマノフーズの商品を)いつも探しています。」
定期的に「消費と補充を繰り返す」ことは、いざという時に保存食を本当に役立てるための商品理解を深めることになり、また家族の成長や人数の変化に応じストックの量を見直すことができるなど、さまざまなメリットがあります。そして、災害時の食事は「おいしさとバリエーション」がとても大切です。もしもの時に、食べ慣れているものや自分の好きなものを食べると、ホッと安らぐ気持ちになり、心の安定にも繋がります。地震や水害などの自然災害は、日本全国どこにいても起きる可能性があります。フリーズドライ食品は常温保存可能で軽くて送りやすいので、遠くに離れたご両親やお子さんのもしもの時の備えになるように、フリーズドライ食品を贈り物にしてはいかがでしょうか。

毎日、楽しい気持ちで食卓につき、豊かな時間を過ごすことは、私たちの体の健康だけでなく、心の健康を保つためにとても大切です。食事の準備に使える時間や余裕をもちにくい夫婦共働きや高齢者世帯・単身世帯が増えた現代社会においては、フリーズドライ食品は「いつでも・どこでも短時間で簡単につくれる」ので、時間や心の余裕に寄与できることでしょう。さらに、よく食べるものであればこそ、利便性だけでなく味にも満足したいもの。味や食感にもこだわり抜いたアマノフーズのフリーズドライ食品は、これからも懐かしい家庭の味わいやあっと驚く食感を再現して、楽しく豊かな食卓を彩ることでしょう。
(2019年12月掲載)

関連情報
フリーズドライは、可能性の塊だ
https://www.asahigroup-holdings.com/pressroom/understand/freeze_drying/index.html
フリーズドライ製品の高品質化と、その可能性に挑戦します。
https://www.asahi-fh.com/products/wholesale/freeze-dry/
消費者庁/食品ロスの削減の推進に関する法律
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/promote/
農林水産省/食品ロス量(平成28年度推計値)の公表について
http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/190412_40.html
環境省/我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(平成28年度)の公表について
https://www.env.go.jp/press/106665.html
農林水産省/災害時に備えた食品ストックガイド
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/guidebook.html
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